トピックス・2003年6月5日
林司法書士・土地家屋調査士事務所

平成15年度第1回簡裁訴訟代理能力認定考査問題


平成15年度第1回簡裁訴訟代理能力認定考査

考   査   問   題

第1問 別紙記載のX及びYの言い分に基づき、以下の小問(1)から(6)までに答えなさい。

小問(1) Xの訴訟代理人として、Yに対して訴えを提起する場合の主たる請求の訴訟物を解答用紙(その1)の第1欄に記載しなさい。

小問(2) 小問(1)の訴訟(以下「本件訴訟」という。)において、Xの訴訟代理人として主張すべき主たる請求の請求原因事実を解答用紙(その1)の第2欄に記載しなさい。なお、腕時計を特定することが必要である場合であっても、単に「腕時計」と記載すれば足りるものとする。また、いわゆる「よって書き」は記載する必要がない。

小問(3) 本件訴訟において、Yの訴訟代理人として行うべき主たる請求の請求原因事実に対するYの認否を解答用紙(その1)の第3欄に記載しなさい。

小問(4) 本件訴訟において、Yの訴訟代理人として、Yの言い分から構成することができる抗弁を解答用紙(その1)の第4欄に記載しなさい(例えば、「弁済による貸金返還債務の消滅」等と記載すれば足り、言い分に基づいた個々の具体的な事実を記載する必要はない。)

小問(5) 本件訴訟において、X側が書証として提出したXの言い分3記載の書面について、Yの訴訟代理人は、「成立を否認する。」とだけ述べた。このY訴訟代理人の訴訟行為の意味及び問題点を解答用紙(その1)の第5欄に200字以内で記載しなさい。

小問(6) 本件訴訟において、Yの訴訟代理人として、どのような立証活動をすべきかを解答用紙(その1)の第6欄に箇条書で記載しなさい。

第2問 司法書士Aは、原告の訴訟代理人として、訴訟の目的の価額(以下「訴額」という。)が90万円以下の訴えを簡易裁判所に提起したが、その訴訟の係属中、被告から、90万円を超える訴額の反訴が提起された。この場合、司法書士Aが原告の訴訟代理人として当該反訴に関し訴訟行為ができるかどうかについて、その結論及び理由を解答用紙(その2)の第7欄に150字以内で記載しなさい。

第3問 司法書士Aは、Xの訴訟代理人として、Yに対する売買代金支払請求訴訟を追行していたが、その訴訟の係属中、Yから、訴外のBに対する貸金返還請求訴訟の訴状を作成して欲しいと言われた。この場合、Aは、これを受任することができるか。Yからの依頼が、Bとの間で締結された土地の売買契約に基づく所有権移転登記手続の代理申請である場合は、どうか。その結論及び理由を解答用紙(その2)の第8欄に150字以内で記載しなさい。

 

(別紙)

〔Xの言い分〕

1 私は、以前、ディスカウントストアーとして有名なお店で、希少価値のある海外の有名ブランドの「SX100」というモデル名の腕時計を偶然見つけ、50万円で購入しました。

2 その後、平成15年5月3日に、たまたま知人のYの家を訪れる機会があり、私は、Yが希少価値のある高級時計の収集を趣味にしていることを知っていたので、この腕時計をして赴いたのです。あいにく、Yは不在で、その息子(20歳)であるZと話をしていたところ、Zから、「そのSX100の腕時計は、父親であるYがかねてから探していたものであるので、ぜひYに譲ってやってくれないか。」と懇願されました。私は、買った値段よりも高く買ってもらえるなら売ってもいいと思い、Zに対し、「Yは知人であるし、60万円くらいでなら、このSX100の腕時計を売ることはできると伝えておいてくれ。」と言いました。

3 その翌日、Zが私の家を訪ねて来ました。Zは、Yの氏名の記載及び氏の印影のある書面を持って来ていて、その書面には、「腕時計(SX100)を60万円で買います。」と記載されていました。私は、Zがその書面を示して、「Yが、60万円でいいから、そのSX100を譲って欲しいと言っている。」と言うので、Yに売ることとし、その腕時計をZに渡しました。代金については、Zが、「Yが振込みにさせて欲しいといっている。」と言うし、その書面にも、「代金は直ちに振り込みます。」と記載されていたので、私の銀行口座の番号を教えました。

4 ところが、Yは、それから1か月以上が経っても、振込みをしてきませんので、私は、Yに対し、直接、催促をしたのです。ところが、Yは、自分はそんな腕時計を買っていないとか、その腕時計がSX100の偽物であったなどと言って、支払をしようとしないのです。腕時計がSX100の偽物であるはずがないのですが、購入先のお店も既に倒産してしまって、私にはどうしようもありません。

5 Yには、約束をした以上、直ちにお金を支払ってもらいたいと思います。

〔Yの言い分〕

1 Xの言い分1は、私は知りません。Xの言い分2及び3は、私にはよく分かりませんが、息子のZの話によると、XとZとの間で、Xがいうようなやりとりがあったことは事実のようです。なお、私が趣味で希少価値のある高級時計を集めており、SX100というモデル名の腕時計を探していたというのも、事実です。

2 また、Xの言い分4のうち、私がXからの督促に応じていないのも事実ですが、私には、そのようなお金を支払う理由は、全くありません。といいますのは、私は、Xが言うような腕時計Xから買ったことはありませんし、Zに対して、腕時計を買うとXに言って来てくれなどと言ったこともないのです。Xの言い分3の書面は、Zが勝手に私の印鑑を使用して作ったようです。

3 しかも、Zの話によると、Zがその腕時計を正規の輸入代理店で見てもらったところ、海外の土産物屋などで安く売られているSX100の偽物であり、60万円の価値など全くないということが分かったというのです。もちろん、仮に、私がその腕時計を買うとしても、偽物と分かっていれば、買うわけがありません。

4 腕時計については、おそらく今も私の家にあると思いますが、こんな偽物はもちろんいりません。

5 Xに対しては、私に対して確認もせず、しかも、こんな偽物を高額で売りつけようとしたということで、とても憤っており、ましてや60万円を支払えなどとは、言語道断であると思います。

注 意

(1) この考査問題用紙の下記該当欄に、受験地、受験番号及び氏名を必ず記入してください。
(2) 別に配布した解答用紙(その1)及び解答用紙(その2)の該当欄に、受験地、受験番号及び氏名を必ず記入してください。
(3) 考査時間は、2時間です。
(4) 考査問題は、記述式です。
(5) 問題の回答は、所定の解答用紙に記入してください。解答用紙への解答の記入は、黒インクの万年筆又はボールペン(ただし、インクがプラスチック消しゴムで消せるものを除きます。)を使用してください。所定の解答用紙以外の用紙に記入した解答は、その部分を無効とします。解答用紙の受験地、受験番号及び氏名欄以外の箇所に、特定の氏名等を記入したものは、無効とします。
(6) 解答用紙は、書損じをしても補充しません。
(7) 考査時間中、不正行為があった場合は、その者の受験は直ちに中止され、その解答は無効なものとして取り扱われます。
(8) 考査問題に関する質問には、一切お答えしません。
(9) 考査問題は、考査時間終了後、持ち帰ることができます。途中で退出する場合には、持ち帰ることができません。


Copyright (c)2003 Yoshihiko Hayashi